原因は?どんな病気?高齢者に多く見られる誤嚥性肺炎とは
食べ物を飲み込んだときに、喉に引っかかってしまったり、誤って気管に入りかけてしまったりした経験がある人もいますよね。そのような場面でも、健康な人であれば、一時的に咳き込むだけで終わることが通常です。しかし、高齢者のように嚥下機能が衰えている人の場合には、誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こすこともあるため注意が必要です。
誤嚥性肺炎とは、食べ物などを飲み込むときに、食べ物や唾液、胃液に含まれた細菌が一緒に気管に入ってしまうことが原因で、肺炎を発症する病気です。寝ているときでも、唾液に含まれている細菌が少しずつ気管に流れ込み、症状を引き起こしてしまうこともあるようです。
誤嚥性肺炎は、特に細菌に対する抵抗力が弱い高齢者などに発症しやすく、肺炎が悪化すれば死に至ってしまう可能性もあるため気を付けなければいけません。なかでも、寝たきりの患者などの場合には、口腔内を常に清潔に維持することが難しいため、肺炎を引き起こす細菌が発生しやすくなります。
また、嚥下の症状は慢性的に繰り返されることも少なくありません。誤嚥性肺炎への治療として行われるのが、抗菌薬による薬物療法です。呼吸の状態や体調の悪化などが見られる場合には、入院による治療を行うこともあります。※薬物療法は必ずしも長期的に頼れる治療法ではありません。
抗菌薬は何度も服用しているうちに、細菌の薬に対する抵抗力が強まってしまうことがあって、薬物療法では対応できなくなってしまうこともあるからです。一般的な肺炎だと、内服や注射、点滴などを使った治療により、ある程度病気は改善されます。しかし、誤嚥性肺炎は、嚥下を起こさないように飲みこむ力を強化させることができない限り、再発のリスクは続くのです。そのため、普段の生活のなかから、誤嚥性肺炎を発症しないように気を付けて過ごすことはとても大切となります。

誤嚥性肺炎の症状
病気の症状が見られたら何の病気であるかを早く認識することが、症状の悪化を防ぐためには大事です。発症している病気が何であるかによって、行う対応は異なってきます。

誤嚥性肺炎の症状は肺炎とは異なるため要注意
誤嚥性肺炎も「肺炎」という言葉が付いている病気ですが、一般的な肺炎とは症状が異なるため気を付けましょう。一般的な肺炎は、強い咳が出て息切れや呼吸困難に陥ったり、38度以上の高熱や全身の倦怠感が数日間続いたりといった症状が見られることが通常です。また、咳で出た痰は粘り気があり、黄色や緑の色が付いていることも特徴となります。しかし、誤嚥性肺炎だと、これらの症状がないケースが通常です。
わかりにくい誤嚥性肺炎の症状
誤嚥性肺炎の場合、明確な典型的症状がありません。そのため、小さな変化でも敏感に察知してあげることが症状の早い発覚につながります。たとえば、呼吸がハアハアしているときには要注意です。誤嚥性肺炎を発症していると、息が浅くて、呼吸の頻度が早くなる傾向にあります。また、いつもと比べて元気がなかったり、食欲がなかったりした場合にも気を付けて様子を見るようにしましょう。
食事の様子もチェック!
食べ物や飲み物を摂取している最中に咳き込んでいるときには誤嚥している可能性があります。咳が軽度で、咳き込みの回数が少なく、咳の反応がきちんと出ていて体が反射機能を働かせているのであれば、重症となるリスクは低い傾向です。のどがゴロゴロ鳴ったり、食事の摂取に時間がかかるようになるなどの変化が見られたりしたら、誤嚥性肺炎のリスクが高いため注意する必要があります。

家でもできる!誤嚥性肺炎を防ぐためのトレーニング
一度発症すると再発の可能性が高い誤嚥性肺炎は、日常生活のなかで事前に予防しておくことが大切です。

喉頭蓋の強化トレーニング
誤嚥性肺炎にならないようにするためには、飲み込む力をしっかりとつけることが大事です。嚥下障害は喉頭蓋(こうとうがい)がしっかりと機能していないと起こりやすくなります。
喉頭蓋の機能を高めるためには舌を鍛えることが、簡単にできて効果的な方法です。一人暮らしや入院中の高齢者は会話をする機会が少なく、舌が衰えやすいと感じます。普段から声掛けを多くし、話す機会を増やしてあげるようにするとよいでしょう。また、舌を左右上下に動かすストレッチ運動も、舌の筋肉アップにつながる方法となります。歌を歌うことも有効です。声を発する機会を増やすし、呼吸訓練にもつながります。
寝たきりの人におすすめのトレーニング
上手に飲み込めるようにするためには、首を鍛えることもポイントです。首を自由に動かせる状態なら、ベッドを起こし、自分で首を左右に曲げたり、回転させたりするなどして鍛えるとよいでしょう。※無理をせずゆっくりおこなってください。
加えて、首を動かした後に必ず、唾液を飲み込むようにすることも練習になります。
ベッドを倒して、仰向けの姿勢をとり、つま先を見るような体勢で枕から頭を浮かせるのもトレーニングです。できれば、首を浮かせた状態を数秒維持するようにします。自分で首を上げることが難しいのであれば、介助者が頭を軽く持ってあげるのも方法です。
誤嚥性肺炎を予防するために日常生活で気を付けたいポイント
一般的には、ゼリーやムース、ペーストなどの状態にしてあげることが必要です。噛む力が不十分でそのまま飲みこんでもスムーズに飲み込みやすくなります。
塊のようになっていて、口に入れても食べ物が方々に広がらないため、口腔内に食べ残しを作りにくくなる点もメリットです。気付かなかった食べ残しを後になって飲み込み嚥下するリスクが少なくなります。また、口に入れたときに刺激が少ない食事を用意することも大事です。冷たいものや熱いものに比べて、常温のもののほうが嚥下反射を起こす可能性は低くなります。
食後すぐに横になることは避けるようにしましょう。可能であれば、食後2時間以上は座って過ごすと安心です。寝たきりの場合には、畳んだタオルを挟むなどして、頭を普段より少し高めの枕(30度程度)に乗せて過ごすことが予防につながります。
細菌の発生を防ぐことも必須です。歯磨きをきちんと行い、口腔内は清潔に保つようにしましょう。嚥下を起こしやすい食事に関しては、特に介助者が気を付けてあげなければいけないと思います。まず、自宅で食事を用意するのであれば、食べ物をすべて飲み込みやすい形に調理することが求められます。

